【益虫】テントウムシのトリビア【最小1ミリ、クマみたいに冬眠する虫】

むし

テントウムシのトリビア

しばしば幸運の象徴とされるテントウムシ。小さく丸っこくて単にかわいいだけではない。彼らは身近にいる昆虫であるが、手強い捕食者でもあるのだ。

主にアブラムシやその他の植物の害虫を捕食する。そのため、農業や園芸で高く評価されている自然害虫駆除において重要な役割を果たしている。

これがどれくらいのインパクトかというと、なんと1匹のテントウムシが一生に食べるアブラムシは5,000匹にも達するのだ。数字を見ただけですぐにわかるほどの生態学的重要性である…。

私もだが子供の頃にテントウムシを捕まえて指に謎の液をかけられた人もいるかもしれない。捕食者に対する防御機構として、テントウムシは危険を感じると脚の関節から悪臭を放つ黄色っぽい液体を出すのだ。

これは「反射出血」として知られる現象で、鮮やかな色彩とともに潜在的な脅威を遠ざける効果的な抑止力となっている。ちなみに化学的にはアルカロイドという物質である。

テントウムシは子供の頃から同じ丸い形ではない。卵から幼虫、蛹、そして成虫へと変化を遂げる。幼虫はつるつるのボタンのような成虫と違って、短い毛虫のような見た目で気持ち悪いと思う人も多いかもしれない。余談だがアブラムシはこの幼虫のときからパクパクとどんどん食べるのである。

昆虫では珍しくもないのだが、単為生殖と呼ばれるプロセスで繁殖することができ、受精せずに卵を成長させる。

大きさの違いも面白い。てんとう虫の最小種はわずか1mmであるのに対し、最大種は1㎝を超える。最大で一センチちょっとなのであまり違いはないようにも思うが小さいのと大きいので10倍ほどの差があるのだ。

世界最小のテントウムシ

大きい方がもっとインパクトがあり、そっちも動画を貼ろうか悩んだがちょっと気持ち悪いと思う人もいるかと思ってテントウムシさんには悪いが自重した。文字でざっくり説明すると大きい方は、テントウムシというより普通の虫のような感じである…。

味覚と嗅覚の感覚は触角にあると考えられている。

実は彼らはクマのように冬眠をする。越冬の間、テントウムシは木の隙間、草の根元、家の軒先などの適当な暖かい場所に大勢集まって冬を越し、暖かい気候が戻ってくると姿を現す。

色とりどりのアジアテントウムシのような特定の種は、大量に家屋に侵入して迷惑な害虫となっている地域もある。

比較的昆虫の中でも魅力的な生き物と思われているがダークサイドもある。食料源が乏しい時には共食い行動を行う。

他にも、種類によっては脅威にさらされると地面に落下して動かない「死んだふり」という頭脳的な戦略をとるなど生存戦略に長けている。

エリトラと呼ばれるカラフルで硬い翅のケースの下にきれいに折り畳まれた繊細な膜状の翅を持つテントウムシは、時速15マイル(約15キロ)で飛ぶことができる。

生物の構造や動きを工学などに応用するバイオミミクリーというジャンルでは、テントウムシの飛行は興味深く研究されている。

キリスト教では聖母マリアと結びつけられ、祝福と幸運をもたらすと考えられている。

一方、アジアの文化においても愛や幸運を連想させることが多いようだ。2010年代の日本の人気アニメ、ジョジョの奇妙な冒険でも主人公のイタリア人が生命の象徴としてテントウムシのブローチを付けていた。基本的にどこでも良いイメージを持たれている祝福された昆虫といえるかもしれない。

イタリアが舞台、ジョジョの奇妙な冒険5部の主人公ジョルノのテントウムシのブローチ

日本と世界のテントウムシ【追加コラム】

日本に生息する主なテントウムシたち

日本には約180種類ものテントウムシが確認されています。最もよく見かけるのはナナホシテントウでしょうか。その名の通り7つの黒い斑点を持ち、赤い体色が特徴です。春から秋にかけて公園や庭先でよく目にするこの種は、日本の固有種ではなく実は東アジア一帯に広く分布しています。

次に多いのは、もしかしたら予測がついたかもしれませんがフタホシテントウです。こちらは2つの黒点を持つ小型種です。

また、ヒメカメノコテントウは甲羅が亀の甲羅のように平たいことからその名がつきました。山地に多く生息するキイロテントウは黄色い体色に黒い斑点というパターンで、他のテントウムシと少し異なる印象を与えます。

あまり知られていないかもなのがクロヘリテントウで、こちらは真っ黒な体色に赤い縁取りがあるという、通常のテントウムシのイメージを逆転させたような見た目をしています。さらに変わった種類としてはムーアシロホシテントウがいて、体色が黒く白い斑点があることから「逆テントウ」とも呼ばれることがあります。

一般的に「テントウムシ」と呼ばれるものはテントウムシ科に属しますが、実はテントウムシダマシという別の科に属する虫もいます。これらは見た目がテントウムシに似ていますが、植物を食べる種が多く農業害虫とされることもあります。てんとう虫の形状でナナホシ以上にたくさん点の模様があるムシです。

ちなみに自分が子どもの頃はテントウムシモドキと友人たちと呼んでいました。どっちにしろテントウムシダマシさんにとってはひどい呼び方かもしれませんね。笑

世界のテントウムシたち

世界に目を向けると、約6,000種以上のテントウムシが存在します。色や模様のバリエーションは驚くほど豊かで、赤や黄色だけでなく青や紫などの珍しい色を持つ種も見つかっています。

オーストラリアに生息するシグモイデラ属のテントウムシは青や緑の金属光沢を持ち、まるで宝石のような美しさです。南アメリカのステノコルスカインデシマリス種は、黒い地に赤い波状の模様が入り、まるでアート作品のような姿をしています。

アフリカに生息するエピラクナ属には鮮やかなオレンジ色の体に複雑な黒い模様を持つ種がいて、現地では「レディバード・ビートル」として親しまれています。また、マダガスカル固有種のエピラクナ・マダガスカリエンシスは星型の模様が特徴で、神聖な存在として地元の伝説に登場することもあるそうです。

北米にはコンバージェント・レディバグという種がいて、環境に応じて体の色が変化する能力を持っています。冬は暗い色になり体温を保持しやすくし、夏には明るい色になって太陽光を反射するという賢い適応をしています。

テントウムシの行動と生態学的役割

狩猟能力の詳細【結構エグい】

テントウムシは小さな体ながら驚異的な狩猟能力を持っています。序盤でもアブラムシを食べると述べてきましたが、ここからはより具体的に生々しい詳細をお伝えできればと思います。

アブラムシに対する捕食効率は非常に高く一日でなんと50~60匹ものアブラムシを食べることができます。これを可能にしているのが彼らの特殊な顎の構造です。テントウムシの顎は獲物を効率的に捕らえ噛み砕くように進化していて、アブラムシの柔らかい体を簡単に切り裂くことができるというわけです。

テントウムシは視覚だけでなく化学的な手がかりを使って獲物を見つけます。アブラムシが出す蜜や植物が害虫に攻撃されたときに放出する揮発性物質を感知して、餌のある場所へとたどり着きます。実験では、テントウムシがアブラムシの集団から数メートル離れた場所からでもその存在を感知できることが確認されています。

実はテントウムシの幼虫は成虫よりも食欲旺盛で、その捕食量は成虫の何倍にもなります。幼虫は急速に成長する必要があるため、より多くのタンパク質を必要とするからなんですね。

また、餌が少ない環境では、テントウムシは「部分捕食」という戦略を取ることもあります。

これはアブラムシを完全に食べ尽くすのではなく、体液だけを吸い取って次の獲物に移るという方法なのです。。どう見てもドラキュラみたいと思われるかもしれませんが、限られた餌を最大限に利用する自然界の賢い戦略というわけです。

農業の視点からみると、テントウムシの存在は非常に重要です。一般的な殺虫剤の多くはテントウムシにも悪影響を与えてしまうため、持続可能な農業では彼らの自然な捕食能力を活かした害虫管理が注目されています。

オーガニック農法を実践する農家の中には、下部で述べるように意図的にテントウムシを畑に放すことで害虫対策をしている例もあります。

テントウムシのコミュニケーション方法

テントウムシたちは様々な方法で同種や他の生物とコミュニケーションを取っています。フェロモンはその代表的な手段で、配偶者を引き寄せたり、仲間に危険を知らせたり、冬眠場所を教えたりするのに使われます。特に集団で冬眠する際には、先に到着したテントウムシが放出するフェロモンが他のテントウムシを同じ場所へ導く目印になるんですね。

テントウムシは触覚を使った接触コミュニケーションも行います。出会った際に触覚をこすり合わせることで、種の確認や繁殖可能かどうかの情報交換をしているようです。また、交尾の前には複雑な「求愛ダンス」を行う種もいて、オスがメスの周りをぐるぐると回ったり前足で優しく触れたりする行動が観察されています。

色彩も重要なコミュニケーション手段です。テントウムシの鮮やかな体色と模様は捕食者に「私は毒があるから食べないで」と警告する役割があるだけでなく、同種のテントウムシに対しても情報を伝える役割を持っています。研究によると、斑点のパターンが異なるテントウムシ同士は交配しにくい傾向があり、これは種の識別に視覚情報が使われている証拠でしょう。

少し変わった例として、テントウムシの中には振動を使ってコミュニケーションを取る種もいます。葉の上で体を震わせることで基質を通じて振動を伝え、近くにいる仲間に情報を伝達するんです。この方法は特に捕食者が近くにいる場合に効果的で、音を立てずに警告を発することができます。

世界各国のテントウムシにまつわる言い伝え

テントウムシは世界中で様々な言い伝えや民間伝承の中に登場します。イギリスでは「レディバード(ladybird)」と呼ばれ、聖母マリアに関連づけられてきました。赤い色はマリアのマントを、七つの黒点は七つの悲しみや七つの喜びを表すとされています。また、テントウムシを殺すと不運が訪れるという言い伝えもあり、子どもたちは手のひらに乗ったテントウムシが飛び立つ方向に恋人がいるという楽しい迷信も持っていたようです。

フランスでは「bête à bon Dieu(神の生き物)」と呼ばれ、農作物を守る神の使いとして敬われてきました。ドイツでは「Marienkäfer(マリアの甲虫)」という名前で、テントウムシが家に入ってきたら幸運が訪れるという言い伝えがあります。同様にスペインでも「mariquita(小さなマリア)」と呼ばれ、良い天気をもたらす存在とされています。

アジアでも様々な伝承があります。日本では「天道虫(てんとうむし)」の名前は太陽(天道)に向かって飛ぶことに由来するとされ、晴天を招く虫として親しまれてきました。また「ナナホシテントウが飛んでいくと晴れる」という言い伝えもありますね。中国では「瓢蟲(ピャオチョン)」と呼ばれ、幸運と繁栄の象徴とされ、家に入ってきたら追い出してはいけないと言われています。

ネイティブアメリカンの伝承では、テントウムシは願いを叶える力を持つと信じられてきました。テントウムシが手に止まったら、そっと願い事を伝え、飛び立たせると願いが天に届けられるという素敵な言い伝えがあります。これらの言い伝えからわかるように、テントウムシは世界中で愛され尊敬される存在なんですね。

家庭菜園におけるテントウムシの活用法

家庭菜園を楽しむ人にとって、テントウムシは強い味方になってくれます。アブラムシに悩まされている菜園では、テントウムシを積極的に誘致することで自然な害虫駆除が可能になります。まず基本的なのは化学農薬の使用を控えること。農薬はアブラムシだけでなくテントウムシにも害を与えてしまうためです。

テントウムシを呼び寄せるには、彼らの好む環境を整えるのがポイントです。例えば、マリーゴールドやコスモス、ヤロウなどの花を植えると成虫のテントウムシが蜜や花粉を求めてやってきてくれます。これらの花はテントウムシの「ピットストップ」として機能し、菜園にとどまる確率を高めてくれるんです。

冬にはテントウムシの越冬場所を提供してあげましょう。落ち葉を集めた堆肥の山や竹や木の枝を束ねた「虫ホテル」を作っておくと、テントウムシが冬を越すのに利用してくれることでしょう。そうすれば春になったときすぐに菜園の害虫駆除に貢献してくれるようになります。

もし緊急にアブラムシ対策が必要な場合は、園芸店でテントウムシの成虫や幼虫を購入して放すという方法もあります。ただし、外来種のテントウムシを導入すると生態系に悪影響を及ぼす可能性があるので、必ず地域の在来種を選ぶようにしましょう。自然のサイクルを尊重した菜園づくりは、テントウムシにとっても私たち人間にとっても良い結果をもたらしてくれます。

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