最強の生物クマムシ
クマムシは顕微鏡で見るとグリズリーベアのように見えることから、俗に「水グマ」と呼ばれる微小生物の一種である。
深海から高山まで地球上のほぼすべての環境に生息している。
この小さな生物は平均わずか0.5ミリメートルという小さなサイズにもかかわらず、非常に回復力が強く、他のほとんどすべての生命体にとっては致命的な条件下でも生き延びることができる。
クマムシのクリプトビオシスって?
そして彼らの最も驚異的な能力のひとつがクリプトビオシスである。
クリプトビオシスとは代謝による生命活動の停止状態だ。
クマムシが脱水、極端な温度、酸素不足などの悪条件に直面すると、乾燥してクリプトバイオシス状態になり、代謝活動が事実上停止する。
この状態になるとクマムシは体内の水分をほぼすべて(最大99%)失い、脚と頭を引っ込め、極限環境に強い樽型の形態に変身する。
これにより、他のほとんどの生物にとっては致命的な状況にも耐えることができるのだ。
そして環境が改善されると、水分を補給し、代謝活動を再開し、通常の生命活動に戻ることができる。
クリプトビオシス状態では極端に代謝が抑制された状態であるため、最長で10年、場合によってはそれ以上、水なしで生き延びることができるのだ。
クリプトビオシスの世界記録は線虫
また、クリプトビオシス自体はクマムシだけの特権ではない。
一応他にも行う生物はいる。
例えばユスリカの一種のネムリユスリカ、ワムシといった小さな生物。そして復活植物という水分で復活するタイプの植物もいる。
そして身近なところでは実はコケ植物が多かったりする。
乾燥状態でこのクリプトビオシスを使い、水分とともに復活する種類が多くいたりするのだ。
ちなみにだが、現在のクリプトビオシスの世界記録は4万6000年の眠りから覚めた線虫だ。
ずっと休眠状態でシベリアの永久凍土でぐっすり眠っていたところを、寝ている間に文字やピラミッドやハンドスピナーやコンピューターを作ったヒト科たちに急に起こされてしまった。
さぞびっくりしただろう。
高圧と極端な温度への耐性
高圧:クマムシは深海の海溝の数倍の圧力に耐えることができる。
高圧下での生存は、極圧下でも機能を維持するタンパク質と細胞膜の安定性、および浮遊代謝状態にとどまる能力によるものと考えられている。
高温: 約150℃までの高温に短時間耐えることができる。
耐熱性を持つタンパク質は、クリプトビオシスの保護状態とともに、細胞構造の完全性を保ち、高温下でのタンパク質の変性を防ぐのに役立っている。
低温: 同様に、クマムシは絶対零度に近い-272℃の低温でも短時間生存することができる。
このような条件下では、クマムシの体はガラス化し、細胞構造を損傷する可能性のある氷の結晶の形成を防ぐガラスのような状態になる。
放射線に対する耐性
放射線についても少し強いどころではない。彼らは最も放射線に強い生物のひとつであり、なんと人間の致死量の何百倍もの放射線に耐えることが可能だ。
この耐性の一因は、効率的なDNA修復機構と保護タンパク質の生産にある。
放射線にさらされるとDNAが損傷することがあるが、クマムシはこの損傷を素早く修復する能力を持っているため、放射線の有害な影響を軽減することができる。
さらに、クマムシのある種のタンパク質は、放射線による損傷からDNAを保護することができる。
更に驚くべきことに、クマムシは真空の宇宙空間でも生き延びられる。
大気圧の欠如と、地球の保護磁場の外側に存在する過酷な放射線の両方に耐えられる凄い生き物なのである。
まだあるクマムシの特徴てんこもり
このように極限環境生物であるだけでなく、植物や藻、バクテリアも食べる、
草食性の肉食性の細菌食性で、多様な食性を持つ食事のゼネラリストでもある。悪く言えば悪食かもしれないが。笑
8本足の生物として描かれることが多いが、実際には他の節足動物とはまったく異なるボディ・プランを持っている。
4つの体節を持ち、それぞれの体節には爪やつま先で終わる1対の脚があり、歩くのではなく這うように移動する。
そして結構かわいい。こちらの動画を見てほしい。わりと怖いというか、ダイオウグソクムシのような力強い写真がクマムシ関連だと多く目にすると思うが、よちよちしていて見ていて和む生物である。
なんと5億年以上前の化石から発見されている。
ここまでのことを聞けば当たり前に思うかもしれないが、数々の大量絶滅でも生き延びてきたことが明らかになっている生物でもある。
繁殖も変わっている。有性生殖と無性生殖があり、なかには両性生殖をする種もいる。
都市伝説めいた話もある。彼らのゲノムに大量の外来DNAが存在しているのだ。
この普通であれば謎の現象は、新たな遺伝物質や潜在的な新能力を提供する可能性のあるプロセスである、遺伝子の水平移動の結果であると今では考えられている。
ゲノムを調査した結果、クマムシには抗酸化酵素や損傷抑制因子として知られるタンパク質をコードする遺伝子が多数存在することが明らかになった。
この遺伝子は先述の放射線による損傷からDNAやタンパク質を保護するメカニズムを提供している。
つまりこの遺伝子の機構によって、クマムシという小さな生物が極限環境や宇宙でも生き延びることができる理由が説明できるわけだ。
クマムシはトレハロースという糖を使って、極度の脱水状態でも細胞を保護する。
このプロセスは、細胞内の水分に代わってガラスのような物質を形成し、すべての代謝プロセスを効果的に停止させ、細胞の構造を維持するわけだ。
クマムシの生活様式や習性については、現在も研究が続けられている。そしてもちろん宇宙にも進出している。
ほとんどすべての極限環境で生存することが発見されているが、別に耐えられるからといって好きとは限らない。
彼らはより普通な環境の生活を好むようで、その大部分はコケや地衣類に生息しているのだ。落ち葉などの裏も普通に好きだ。
唐突なクマムシ最弱説 え、なんで!?
ここまで言っていたことと違うと思われるかもしれない。
しかしあまり知られてないがクマムシが全っ然強くない面もあるのだ。
例えば、クマムシは極端な高温にさらされても生き延びることができる。
そうは言ったが、
水分のある自然の状態では高温にかなり弱いのだ。
摂氏37.1度の熱が持続するだけで死に至ることが証明されている。370度ではない。
37.1度だ。通常時はもはや人間より弱いのだ。人間なら風邪か平熱でもこのくらいの人はいるはずだ。笑
そしてなんでだよ。。と言いたくなるような致命的な彼らの弱点はもう一つある。
これまでの数々の驚異的な生存能力にもかかわらず、クマムシの寿命は驚くほど短いのだ。
どのくらいか?
10年?5年?
そんな長くはない。
通常は数ヶ月しか生きられないのである。。切ない。
クリプトビオシスすると先述のように10年など生きられる訳だが、仮死状態である。
こう考えるとずっと地中でのんびり暮らして少し夏に外に出て生を終えるセミのが少しましな気もする。
以上、強いがどこか切ないクマムシの話である。。
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