【7種類もいる!】ウミガメのトリビア【意外に知らない】

海を泳ぐウミガメの姿。日光が差し込んでいる 動物

恐竜の時代から1億年以上もの間地球の海を泳ぎ続けてきたウミガメたち。

現在世界に存在する7種のウミガメはすべて絶滅の危機に瀕していて、その生存は人間の活動に大きく左右されています。

今回は、海を数千キロも移動する航海能力、地球の磁場を感じ取るナビゲーション能力、そして海洋生態系を支える重要な役割など、そんなウミガメたちの知られざる世界を掘り下げていきたいと思います。

ウミガメの種類と特徴

世界に存在する7種のウミガメ

現在地球上には7種のウミガメが生息しています。それぞれが独自の特徴と生態を持ち異なる生息域で暮らしています。

最も大きなウミガメは「オサガメ」で体重は最大で約900kg(2,000ポンド)に達し体長は約2m(7フィート)近くになることもあります。オサガメは甲羅が革のように柔らかく他のウミガメとは一線を画す独特の外見をしています。

こちらの動画のタイトルは、レザーバックタートルと描いてありますが革の背中ということです。オサガメの英名です。

他の代表的な種には甲羅が緑色の「アオウミガメ」、タイマイという名前でも知られる「タイマイ」そして世界中の温暖な海に広く分布する「アカウミガメ」などがあります。

陸棲のカメと異なりウミガメは足や頭を甲羅の中に引っ込めることができません。

これは海中での素早い遊泳のための適応でありその流線型の体は水中での移動に適しています。一方でこの特徴は陸上では彼らを脆弱にしており特に産卵のために上陸する際には多くの危険にさらされることになるのです。

なにげに知られていない身体的特徴

ウミガメの身体は海洋生活に完璧に適応しています。強力なヒレは水中で効率的に推進力を生み出し長距離の移動を可能にします。

また塩分の多い海水中で生きるため塩腺と呼ばれる特殊な器官を持っており体内の余分な塩分を排出する仕組みを備えています。

ウミガメは空気呼吸をする動物です。そのため定期的に海面に浮上して肺に空気を取り込む必要があります。種類や活動状態によって異なりますが水中に潜っていられる時間は数分から数時間とかなりの幅があります。休息時には長時間潜水できる種もいて海底で眠ることもあるようです。

また硬い甲羅と力強いヒレで海での生活に適応したウミガメですが陸上では動きが緩慢で脆弱です。

特に産卵のために砂浜に上陸する際は多くのエネルギーを使い捕食者にも狙われやすくなります。そのためメスは通常捕食者や人間の妨害を避けるために夜間に上陸して産卵を行うのです。

ウミガメの特殊能力

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長距離航海とナビゲーションシステム

ウミガメは地球上で最も優れた航海者の一つと言えるでしょう。いくつかの種は餌場と営巣地の間を何千キロも移動することが知られています。例えばアカウミガメは大西洋を横断する個体もいてその移動距離と精度は驚異的です。

特に注目すべきは彼らのナビゲーション能力です。ウミガメは地球の磁場を感知する能力を持っておりこれが長距離移動の際の「コンパス」として機能しています。生まれた浜辺の磁気的特徴を記憶し成熟すると再びその場所に戻ってくることができるのです。

子ガメは孵化してすぐにこの「磁気コンパス」を使い始めます。巣から出た後地球の磁場を感知して海への道を見つけるのです。しかし残念なことに海岸線の人工的な照明が子ガメの方向感覚を狂わせることがあります。明るい光に引き寄せられた子ガメたちが海ではなく内陸へと進んでしまうケースも少なくないのです。

生態系での役割

ウミガメは海洋生態系において非常に重要な役割を果たしています。

例を挙げるとアオウミガメは海草を食べることで藻場の健全性を維持するのに役立っています。彼らが海草を「刈り込む」ことで藻場が過密になるのを防ぎ健全な状態を保つことができるのです。

またタイマイなどの種はサンゴ礁の健全性を維持する上で重要です。これらのウミガメがスポンジなどを食べることでサンゴの成長を阻害する可能性のある生物の数を調整しています。ウミガメの数が減少するとこれらの繊細な生態系のバランスが崩れる可能性があるのです。

さらにウミガメの巣は海岸の砂浜の栄養循環にも貢献しています。

孵化しなかった卵や空の卵殻は砂浜の生態系に栄養を提供し様々な微生物や植物の成長を支えています。このようにウミガメは陸と海をつなぐ重要な役割も果たしているのです。

ウミガメのライフサイクル

神秘的な産卵と孵化のプロセス

ウミガメのライフサイクルはメスが産卵のために生まれた浜辺に戻ってくることから始まります。

彼女たちは通常2〜4年に一度の周期で産卵のために上陸します。上陸は主に夜間に行われこれは捕食者や人間の妨害を避けるためです。

メスは砂浜の適切な場所を選び後肢で穴を掘りそこに一度に約100個の卵を産みます。一匹のメスは一回の産卵シーズンに複数回上陸することがありシーズン全体では数百個の卵を産むこともあります。産卵を終えると彼女は卵を砂で覆い海に戻ります。

卵は砂の中で約45〜70日間温められその間に胚が発育します

。興味深いのは巣の温度によって孵化する子ガメの性別が決まることです。これは「温度依存性決定」と呼ばれるプロセスで一般的に高温ではメスが低温ではオスが多く生まれる傾向があります。このため地球温暖化による砂浜の温度上昇はウミガメの性比に大きな影響を与える可能性があります。

「失われた数年」と成長過程

子ガメが孵化して海に辿り着いた後の数年間は研究者たちの間で「失われた数年」と呼ばれています。

これはこの期間のウミガメの行動や生活場所についての情報が非常に限られているためです。小さな子ガメは広大な海の中で追跡が難しくどこでどのように時間を過ごしているのかは謎に包まれています。

一般的には子ガメは最初の数年間を外洋の流れに乗って過ごし漂流するウキクサや海藻の群落で保護と食料を得ていると考えられています。この時期の生存率は非常に低く推定では1,000匹の子ガメのうち成体まで生き残るのはわずか1匹程度と言われています。

成長に従い多くの種は沿岸の餌場に移動します。

例えばアオウミガメは若い時期には肉食性で小さな甲殻類や魚を食べますが成熟するにつれて植物食に移行し主に海草や藻類を食べるようになります。このような食性の変化はウミガメの成長段階における興味深い適応です。

ウミガメが直面する脅威

人間活動による影響

現在世界のウミガメ7種はすべて国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種または絶滅の危機に瀕していると分類されています。その主な原因は人間の活動によるものです。

漁業による偶発的な捕獲(混獲)はウミガメにとって深刻な脅威です。網や釣り糸に絡まったウミガメは空気を吸うために水面に上がれず溺れてしまうことがあります。またウミガメの肉や卵、甲羅を目的とした密猟も一部の地域では依然として問題となっています。

沿岸開発による生息地の破壊も大きな問題です。リゾート開発や都市化によって砂浜が失われウミガメの産卵地が減少しています。さらに海岸の人工照明は子ガメの方向感覚を狂わせ海へ向かうべき子ガメが内陸へと進んでしまうことがあります。

環境変化とプラスチック汚染

気候変動もウミガメにとって深刻な脅威となっています。海面上昇により産卵地の砂浜が浸食され巣の場所が減少しています。また砂の温度上昇は子ガメの性比に影響を与え将来的な繁殖能力を左右する可能性があります。

プラスチック汚染もウミガメにとって致命的な問題です。

特にビニール袋は水中でクラゲに似て見えることからウミガメはしばしばこれをエサと間違えて摂取してしまいます。プラスチックを飲み込んだウミガメは消化器官がブロックされ栄養失調や死に至ることもあります。

日本はこうしたゴミの海洋への影響の割合としては、ほぼ影響を与えていない国の一つでもあります。しかしまさに日本がいる東アジア、東南アジアは世界的な原因となっている排出国の集まるゾーンでもあります。日本は国際的な取り組みを先進国としてより働きかけていくことが大切でしょう。

更には化学的な海洋汚染もウミガメの健康に影響を与えています。化学物質や重金属などの汚染物質はウミガメの免疫系を弱めフィブロパピローマという腫瘍性の病気を引き起こす可能性があるのです。この病気に感染したウミガメは体にイボ状の腫瘍ができ視力や泳ぎの能力に影響が出ることもあります。

ウミガメの保全活動

世界各地の保護活動

ウミガメとその生息地を守るため世界中で様々な保全活動が行われています。多くの沿岸コミュニティ、政府機関、非営利団体が協力してウミガメの保護に取り組んでいます。

たとえば産卵地では巡回パトロールを行い密猟者から卵を守るとともに産卵したメスや孵化した子ガメのデータを収集しています。また一部の地域では捕食者や人間の干渉から卵を守るため専用のふ化場に卵を移して保護する取り組みも行われています。

漁業による偶発的な捕獲を減らすため「カメ除外装置(TED)」と呼ばれる特殊な装置を漁網に取り付けることを義務付ける法律も多くの国で制定されています。この装置により網に入ったウミガメは脱出口から逃げることができます。

私たちにできること

ウミガメの保全に貢献するためには私たち一人ひとりができることがたくさんあります。まずプラスチックの使用を減らし適切に廃棄することが重要です。特にビニール袋やストローなどの使い捨てプラスチックはできるだけ使用を避けましょう。

ウミガメの産卵シーズン中に砂浜を訪れる際は巣や子ガメを乱さないよう注意が必要です。懐中電灯の使用を最小限にし子ガメが海に向かって移動している場合はその進路を妨げないようにしましょう。

また持続可能な漁業製品を選ぶことで混獲を減らすことにもつながります。「ウミガメにやさしい」と認証された製品を購入することで責任ある漁業を支援することができます。

ウミガメ保護団体へのボランティアや寄付も直接的な支援方法です。多くの団体では産卵シーズン中のビーチパトロールや子ガメの保護活動に一般の人々の参加を受け付けています。

ウミガメの魅力的な生態

共生関係と社会的行動

ウミガメの世界には他の海洋生物との興味深い共生関係が見られます。例えば「クリーナーフィッシュ」と呼ばれる魚やある種のエビはウミガメの甲羅や皮膚についた寄生虫や藻を食べることでウミガメの健康を保つのに役立っています。これは掃除する側は食事を得られ、ウミガメは必要な毛づくろいを得られるという双方にメリットのある関係です。

またウミガメは主に単独で生活しますが産卵地や餌場では複数の個体が集まることもあります。特に「アリバダ」と呼ばれる現象では何百、時には何千ものオリーブヒメウミガメのメスが同時に砂浜に上陸して産卵することがあります。この壮大な光景は自然界の最も驚くべき出来事の一つと言えるでしょう。

長寿と回復力

ウミガメは非常に長寿の生き物です。多くの種は人間とほぼ同じかそれ以上の寿命を持ち80歳以上生きる個体もいると考えられています。ただし自然状態での正確な寿命を知ることは難しく研究者たちは今もその全容を解明しようとしています。

またウミガメは驚くべき回復力を持っています。怪我や病気から回復する能力は非常に高く例えば捕食者に襲われて失ったヒレの一部が再生することもあります。さらに数百万年もの進化の歴史の中で彼らは様々な環境変化や困難を乗り越えてきました。

現在彼らは人間の活動による未曾有の脅威に直面していますが適切な保護活動によってその数を回復させることは可能です。実際一部の地域では保全努力の成果が表れ始めておりウミガメの個体数が徐々に増加しているケースも報告されています。

ウミガメに関するQ&A

ウミガメの寿命はどれくらいですか?

ウミガメの正確な寿命を知ることは難しいですが多くの種は人間と同程度かそれ以上生きると考えられています。研究によれば80歳以上生きる個体もいるようです。ただし自然界での寿命を正確に測定することは困難で飼育下のデータや推定に基づいているため実際の寿命はさらに長い可能性もあります。野生での生存率は特に初期段階で低く子ガメが成体まで生き残る確率は約1,000分の1と推定されています。

ウミガメはなぜ海岸に戻ってくるのですか?

メスのウミガメは産卵のために海岸に戻ってきます。多くの場合自分が生まれた同じ浜辺や近隣の海岸を選びます。

これは「帰巣本能」と呼ばれ地球の磁場を感知する能力によって可能になっています。生まれた浜辺の磁気的特徴を記憶し成熟すると(種によって異なりますが約15〜30年後)その場所に戻る能力があります。

オスは一生を海で過ごし産卵のために上陸することはありません。メスは通常2〜4年に一度の周期で産卵し一回のシーズンで複数回上陸することもあります。

ウミガメの保全のために個人ができることは何ですか?

個人でもウミガメ保全に貢献できることはたくさんあります。既に述べたようにプラスチックごみを減らすことが重要です。特にビニール袋やストローはウミガメがクラゲと間違えて食べてしまうことがあるからです。データ的には日本は海洋への不法投棄も国際的にはかなり少ない部類の国なので、これまで通り、ポイ捨てをしたりしないだけでも彼らウミガメに貢献しているともいえるでしょう。

また、支援団体への寄付以外などで積極的に活動を行う場合は、いわゆる浜辺でのビーチクリーンアップ活動への参加もやはり効果的です。またウミガメの産卵地となる砂浜を訪れる際は、夜間のライト使用を控え巣や子ガメを乱さないようにしましょう。

子ガメの性別はどのように決まるのですか?

ウミガメの子ガメの性別は「温度依存性決定」と呼ばれる興味深いプロセスで決まります。つまり卵が孵化する際の巣の温度によって性別が決定されるのです。一般的に高温(約29.5℃以上)ではメス、低温(約29.5℃以下)ではオスが多く生まれる傾向があります。

このため地球温暖化による砂浜の温度上昇はウミガメの性比バランスに大きな影響を与える可能性があり保全上の重要な懸念事項となっています。実際に近年では一部の産卵地でメスの比率が著しく高くなっているという報告もあります。

まとめ

ウミガメは1億年以上もの間地球の海を泳ぎ続けてきた古代の生き物です。その長い進化の歴史の中で彼らは驚くべきナビゲーション能力や長距離移動能力を発達させ海洋生態系における重要な役割を担ってきました。

しかし現在世界中のウミガメは様々な人間活動による脅威に直面しています。生息地の破壊、漁業による混獲、プラスチック汚染、気候変動などが彼らの生存を脅かしています。

7種すべてが絶滅危惧種または絶滅の危機に瀕していると分類されている現状は私たちに重大な警鐘を鳴らしているといえるでしょう。

ただ、幸いなことに世界中で多くの保全活動が行われていて一部の地域ではその成果が表れ始めています。野生のウミガメがもっと見られるような海になることは海全体の環境回復のバロメーターといえるかもしれませんね。

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