はじめに
日本の街中や公園でよく見かけるスズメ。「チュンチュン」と可愛らしい声で鳴き小さな体で忙しなく動き回る姿は多くの人に親しまれています。しかし私たちが日常的に目にするスズメについて、実はあまり知られていない事実もたくさんあります。例えば「スズメは夜どこにいるのか?」「スズメを呼ぶ方法はあるのか?」「日本のスズメと海外のスズメはどう違うのか?」といった疑問について考えたことはありますか?
この記事ではそんなスズメの知られざる生態や習性に迫り、世界各地のスズメ事情についても探っていきます。
スズメは夜どこにいるのか
スズメの夜の過ごし方
日中活発に活動するスズメですが夜になるとその姿を見かけることはめったにありません。ではスズメは夜どこで過ごしているのでしょうか?
スズメは夜間主に以下の場所で休息をとります。
- 木々の茂みの中
- 建物の隙間や軒下
- 電線や街灯の近く
- 人工的な巣箱
- 季節によっては葦原(あしはら)などの草むら
スズメは基本的に昼行性の鳥で日没とともに活動を終えねぐらに帰ります。ねぐらとして特に好まれるのは捕食者から身を守れる安全な場所です。葉の茂った木の上部や建物の隙間などは猫やヘビなどの捕食者から身を隠すのに適しています。
また寒い季節には体温維持のために集団でねぐらを作ることが多く時には数十羽から数百羽ものスズメが一箇所に集まることもあります。これを「ねぐら入り」と呼び夕暮れ時に観察できることがあります。
都市部と郊外でのねぐらの違い
スズメのねぐら選びは生息環境によっても異なります。
都市部のスズメ 都市に住むスズメは建物の隙間、看板の裏側、エアコンの室外機の陰など意外に人工的な構造物を利用することが多いです。特に街灯の近くはわずかな明かりがある環境を好む傾向があります。またビルの外壁のツタや常緑樹の茂みもよく利用されます。
郊外のスズメ 一方郊外に住むスズメはより自然な環境でねぐらを見つけます。竹林、葦原、茂みの多い低木など自然の植生を利用します。農村部では納屋や倉庫の軒下なども利用されます。
季節によるねぐらの変化
スズメのねぐら選びは季節によっても変わります。
春から夏(繁殖期) 繁殖期のスズメは巣を中心に生活します。メスは卵を温めるために夜も巣で過ごしますがオスは近くの茂みなどで一晩を過ごすことが多いです。
秋から冬(非繁殖期) 寒くなると防寒と安全のためにより大きな集団でねぐらを形成します。この時期は建物の隙間や常緑樹の茂みなど風を防げる場所が好まれます。
スズメを呼ぶ方法はあるのか
自然な方法でスズメを誘引する
スズメを庭や自宅の近くに呼び寄せたいと思ったことはありませんか?いくつかの方法でスズメを誘引することが可能です。(もちろん市街地や公園ではやめましょう、のどかで広い周りに迷惑のかからないカントリーサイド向け情報ですw)
餌付けによる誘引
最も効果的なスズメの誘引方法は餌を提供することです。
好みの食べ物。スズメはイネ科の穀物を好みます。精白していない米、キビ、アワ、ヒエなどが効果的です。またパン屑も喜んで食べますが栄養面では穀物の方が適しています。
餌台の設置。猫などの捕食者から安全な高さに餌台を設置しましょう。地面から1.5m以上の高さが理想的です。
水場の提供。小さな水浴び場や水飲み場を設置すると特に夏場は効果的です。浅い皿に水を張るだけでも十分ですが定期的に水を交換することが大切です。
環境づくりによる誘引
スズメが好む環境を作ることも長期的な誘引につながります。
低木や茂みの植栽。スズメは身を隠せる茂みを好みます。庭に低木を植えるとスズメが安心して訪れるようになります。
巣箱の設置。繁殖期(3〜8月頃)には適切なサイズの巣箱を設置するとスズメが営巣する可能性があります。入り口の直径は約3cmが適しています。
砂浴び場の提供。スズメは羽の手入れのために砂浴びをする習性があります。乾いた細かい砂を浅い容器に入れて提供するとスズメが集まることがあります。
音や鳴き声によるスズメの呼び寄せ
スズメの鳴き声を真似たり音を使って呼び寄せることも可能です。
鳴き声の録音。スズメの鳴き声の録音を小さな音量で再生すると興味を持って近づいてくることがあります。特に春の繁殖期には効果的です。
チリチリという音。金属音や高い周波数の音に反応することがあります。小さな鈴やベルを静かに鳴らすと興味を示すことがあります。
ただし鳥の鳴き声を過度に再生するとテリトリーを主張する声と誤解されて逆効果になることもあるため短時間・小音量で試すことをお勧めします。
スズメとの信頼関係を築く方法
スズメを一時的に呼び寄せるだけでなく継続的に訪れてもらうためには信頼関係の構築が重要です。
規則性を持った餌やり。毎日同じ時間帯に餌を提供するとスズメはその時間を覚えて訪れるようになります。
静かに観察する。急な動きや大きな音はスズメを驚かせます。窓越しなどある程度距離を保って観察しましょう。
長期的な取り組み。スズメが安心して訪れる環境づくりには時間がかかります。数週間から数ヶ月の継続的な取り組みが必要です。
スズメの日本と海外での違い
日本のスズメの特徴
日本で一般的に見られるスズメは「ニュウナイスズメ」(Passer montanus)という種類で以下のような特徴があります。
外見。体長約14cm、褐色と灰色を基調とした地味な色合いで頬に黒い斑点があります。オスとメスの外見の差はほとんどありません。
生息環境。人間の居住地に近い場所に適応し都市部から農村部まで広く分布しています。
食性。雑食性で穀物や種子を中心に昆虫やクモなども食べます。
繁殖。木の洞や建物の隙間などに巣を作り年に2〜3回、4〜6個の卵を産みます。
社会性。小さな群れを形成して行動することが多く強い社会性を持っています。
欧米のスズメ事情
欧米では主に「イエスズメ」(Passer domesticus)という種類が分布しており日本のニュウナイスズメとは異なる特徴があります。
外見。ニュウナイスズメよりやや大きくオスとメスの差が明確です。オスは灰色の頭頂部と黒い喉が特徴的です。
生息域。北米、南米、欧州、アフリカ、オーストラリアなど世界中に広く分布しています。多くは人間の活動によって意図的または偶発的に導入されました。
生態。ニュウナイスズメより攻撃的な傾向があり在来種を駆逐してしまう問題も起きています。
文化的位置づけ。欧米では時に「有害鳥獣」として扱われることもありますが都市生態系の一部として研究対象にもなっています。
アジア各国のスズメ文化
アジア諸国ではスズメに対する文化的な捉え方にも違いがあります。
調べたところ中国と韓国では結構あたりは強めなようです。。
中国。スズメは麻雀(マージャン)と呼ばれ伝統的には縁起の良い鳥とされていますが1950年代の「四害駆除運動」で、害鳥として大量駆除の対象となり生息は壊滅的となった歴史もあるようです。
韓国。サムセと呼ばれ勤勉さや家族の絆の象徴とされることがあるよう。民間療法としてスズメの肉や卵を食用とする地域もあるそうです。
インド。北部を中心にニュウナイスズメが分布し農村部では穀物を食べる害鳥として見られることもありますが、都市部では親しまれているよりの立ち位置です。
興味深い地域別のスズメ事情
世界各地ではその地域特有のスズメ事情があります。
イギリス。かつては非常に一般的だったイエスズメが近年急激に数を減らしており保護対象となっています。
オーストラリア。1860年代に導入されたイエスズメは侵略的外来種として問題視されています。
北米。1850年代に持ち込まれたイエスズメは在来の鳥類を圧迫する問題を引き起こしています。
アフリカ。サハラ以南のアフリカにはイエスズメの亜種やアフリカスズメなど独自のスズメ種が生息しています。
スズメに関するQ&A
スズメは何年くらい生きるのですか?
野生のスズメの平均寿命は2〜3年程度ですが良い環境下では5〜7年生きることもあります。最長記録では10年以上生存した例も報告されています。
野生での生存率が低い主な理由は猫などの捕食者や病気、環境の変化などによるものです。一方適切な環境で飼育されたスズメはより長生きする傾向があります。
スズメの減少は本当なのでしょうか?
日本を含む世界各地でスズメの個体数の減少が報告されています。日本でも1990年代以降、スズメの数は約3割減少したとされています。減少の原因としては農薬の使用、生息環境の変化、都市化による営巣場所の減少などが考えられています。
特に都市部の高層化や住宅の気密性向上によりスズメが巣を作れる隙間が減っていることも大きな要因です。
海外でも日本と同じようにスズメはよく見られますか?
地域によって大きく異なります。欧州や北米の都市部ではイエスズメが日本のスズメ同様に身近な鳥として見られますが一部の地域では数が大幅に減少しています。
例えばイギリスでは1970年代から都市部で約60%も減少したとされています。逆にオーストラリアや南米などイエスズメが外来種として持ち込まれた地域では在来種を脅かす問題種として見られています。アジアの多くの国では日本と同様にニュウナイスズメが一般的ですが都市化の影響で生息数に変化が見られる地域もあります。
まとめ
スズメは私たちの身近に生息する野鳥でありながらそのライフスタイルや習性には意外と知られていない面がたくさんあります。夜間は茂みや建物の隙間など安全な場所でねぐらを取り季節や環境によってその行動パターンを変化させる賢い鳥です。
スズメを呼び寄せるためには適切な餌や水場の提供、安全な環境づくりが効果的です。スズメとの共存は単なる楽しみだけでなく減少傾向にある彼らの保護にもつながる重要な取り組みとも言えるでしょう。
また日本で見られるニュウナイスズメと欧米などで一般的なイエスズメは異なる種であり生態や外見にも違いがあります。世界各地ではスズメに対する文化的な捉え方も様々で保護対象から害鳥まで、その位置づけも多様です。